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CCC (Courmaeur~Champex~Chamonix) 93K : 2011/8/26 [ランニング]

今年の一番の目標、CCC。UTMB (Ultra-trail du Mont-Blanc)の4つのレースの一つで、イタリアのCourmaeurからスタートし、スイスのChampexを経てフランスのChamonixがゴールの93km。累積高度5100mのモンブランの周りを巡るトレイルランニングの大会に参加した。

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ウルトラマラソンの世界。僕がマラソンの世界に興味を持ったのは、どちらかといえばロードレースよりも山登りがきっかけで、これまでもロードの大会よりもトレイルランニングの大会を中心に走ってきた。ツールドモンブランのコースは2009年にバスを使いながら歩いたことがあり、かなり大満足のトレッキングだったのだが(当時の記録)、当時はUTMBやCCCのような大会がこのエリアで行われていることを聞き、物好きな人もいるもんだなぁ~と、自分とはまったく無縁なものだと思っていた。

2009年にブリテイッシュ10Kをヒーヒー言いながら1時間かけて走ったのを皮切りに、2010年にパリマラソン42kとスイスアルペンマラソン78kと、トレイルランニングに徐々にはまっていき、そして今年とうとうCCCに参加することになるのだから、人生は不思議だ。

距離は98kで制限時間26時間、累積獲得高度5800m(今年は夜間に雷雨の予報のため直前に93k、制限時間25時間、累積獲得高度5100mに変更)とこれまでの大会とは桁違いにしんどそうなレースなので、2011年は4月のパリマラソン42k以降、5月にRichmond Park Marathon 42k、6月にSouth Downs 42k、7月にFairland Challenge 50k、8月にNorth Downs 50Mと長い距離の大会をこなし、なんとかどれもゴールすることができた。どれもトレイルの大会で、走るのが遅い自分にはというマラソンというよりは、トレッキングの延長のような感じで半分くらい歩くようなものだったが、長い時間行動をする自信にはちょっとなった。
                  
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<コース>

Courmayeur 1,200m ~ Refuge Bertone 1,989m ~ Refuge Bonatti 2,010m~ Arnuva 1,769m ~ Grand Col Ferret 2,537m~ La Fouly 1,598m~ Champex-Lac 1,477m ~ Martigny 499m~ Trient 1,300m~ Les Jeurs 1,400m~ Vallorcine 1,260m~ Chamonix 1,035m 

今回は一月ほど前の地すべりと、当日のサンダストームの天気予報で、コースが変更となり、距離は98kmから93kmに短縮。前半の2500mのピーク一つと後半の2,000mのピーク3つがカットになる代わりに、標高500mまで下ろされて上り返すというコースに。


前日

ジュネーブから乗り合いバスで昼過ぎにシャモニに到着。天気もよく、UTMBを目前に控えてちょとしたお祭りの雰囲気。UTMB,CCC,TDS,PTLで5,000人くらいのランナーが走るので、街中でもカモシカのような足をしたランナーの姿をたくさん見かけた。とりあえず、街の中心にあるゴールに行ってみた。あさっての昼のはここにゴールしているはず。

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そしてスポーツセンターがレジストレーションの会場となっている。この大会は以下のグッズが必携となっており、前日のレジストレーション時に荷物チェックが行われ、一つ一つもっていること確認される。今回はサロモンの13ℓのザックに、ボトルホルダー、ランニングベルトなどをつけて走った。サバイバルブランケットなんていままで山登りでも一度も使ったことがないのだが、今回はこれに助けられることに。。。会場には日本人ボランティアの人も何人かいて、頑張ってくださいといわれ、元気をもらう。今回の4つの大会合計で日本人が200人弱くらい参加していたようだ。トレラン雑誌で姿を見かけないことのない、鏑木選手もUTMBに参加。

  - mobile phone with option enabling its use in the three countries
  - personal cup or tumbler 15cl minimum (water bottle not acceptable)
    - stock of water minimum 1 litre,
    - two torches in good working condition with replacement batteries,
   - survival blanket 1.40m x 2m minimum
   - whistle,
   - adhesive elastic band enable making a bandage or a strapping
     (mini 100cm x 6 cm),
   - food reserve,
   - jacket with hood and made with a waterproof (recommendation:
      minimum  10,000 Schmerber) and breathable (recommendation:
     RET lower than 13) membrane (Gore-Tex or similar) which will
     withstand the bad weather in the mountains.
   - long running trousers or leggings or a combination of leggings and long 
     socks which cover the legs completely,
   - warm long sleeved clothing (type ≪ second layer ≫, cotton excluded)
      of a weight of 180g minimum
   - cap or bandana
   - warm hat
   - warm and waterproof gloves
   - waterproof over-trousers

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今日は天気がよく快晴。ただ天気予報では明日の夜からちょっと崩れるらしい。スタートは10:00、なんとか天気が持つと良いなと思いながら、準備をして早めに就寝した。

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Courmayeur  (1220m) スタート 10:22  

大会が用意してくれる朝6:30のバスでChamonixからCourmayeurに向かう。もうちょっと遅い時間のバスもあるのだが、レジストレーションが遅めだったので、この時間のバスしか残っていなかったのは仕方がない。モンブランの下をぶち抜いたモンブラントンネルを抜けると1時間もかからずに、スタート地点であるイタリアのCourmayeurへ。7:30には着いてしまい、時間を持て余すが、一緒に参加しているパリマラの会のみんなとバナナを食べたりして時間をつぶす。これまでのどの大会よりもマジランナー率が高くちょっとびびるが、それなりに練習をしてきたので大丈夫だと言い聞かせる。レース何日も前から、こんなに気持ちが高ぶったのも初めての経験かもしれない。不安と期待感が入り混じった気持ちでスタートを待っていた。

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スタートは申告タイムに基づいた3ウェーブに分かれており、自分は10:20の最終ウェーブでスタート。前のほうのピリピリしたムードと対照的に後ろの方はのんびりとしたムードが流れていた。またコースの変更があったらしく、携帯のテキストメールで後半の3つの山を飛ばすとの連絡が来た。おお、これは制限時間変わらずの短縮!?ちょっと完走できる可能性が高まったかもと、みんなと話したのだが、これは間違いだった。(後に関門のタイムも繰り上げられていることが判明。。)     

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カウントダウンを経て、スタート!いよいよ始まってしまった。始まるまでは、緊張もしていたが、走り出してしまえば緊張している余裕もない。最初は街中を沿道でたくさんの人が応援してくれる中、走る。

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程無く市街地パートは終わるので、最初からストックを出して走りだした。街の外れから登りが始まり、つづれ折りの急登で集団の中、黙々と登る。去年スイスアルペンマラソン78kで登りのペースで全く着いて行けず、抜かれまくったことが頭をよぎったが今年は集団のペースにはついていける。これは練習の成果かとちょっと嬉しい気持ちに。

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何も考えずにもくもくと登っていくと、Courmayeurの街が小さく見えてきた。

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Refuge Bertone (1,989m) 4.7km/93km 11:46

最初のエイドのある Refuge Bertone。ここまで750mくらい標高を上げてきているのだが、意外とまだ大丈夫。当初のコース設定では2,500m近辺まで上がってから、ここにたどり着く予定だったので、変更によってここまでは少し楽なコース設定になっている。実は、ここが変更になっている認識がなかったのだが、プロトレックの高度計が2,000mから上に上がらなくなったので、ここでコース変更に気づいたのだった。軽く水を飲んで、早々に出発することにする。なんとなく雲が多く、天気予報の夕方からサンダーストームというのが気になっていて、成るべく天気の良い明るいうちに進んでおきたいと、この時点では気持ちがちょっと急いていた。

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Bertoneを抜けるとトラバースになるので、ここからみんな走り出す。おお、、そうだったこれはトレランレースだったということで、自分もストックを持って走る。

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どこまでも続くトラックの上に無数のランナーが見えていた。

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途中道が細くなって、瀬を渡ったりするところでは多少渋滞もあり。

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雲で全体は見えなかったが、左手にグランドジョラスの山群を眺めながら走る。前回トレッキングで歩いたときはCourmayeurからArnuvaまではバスを使っており、このあたりは歩かなかった。実はCCCのコースはその時に歩かなかったコースをかなりカバーしているので、どんな景色が広がっているのかがとても楽しみだった。ここの景色はこんな景色だったのかぁと納得。     

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ただまだレース序盤なので、景色をみながらノンビリというわけにはいかず、せっせと走れるところは走る、そうしないと完走はおぼつかないぞぉ~と思いながら走っていたので、なかなかしんどい。

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Refuge Bonatti (2,010m) 7.1km/93km 13:07

そうこうしているうちに、Refuge Bonattiに到着。ここでこのコースを通じて出てくる、コンソメスープ、細いパスタ入りを初めて食べる。塩分も適度に入っており、これにバゲットを浸して食べると炭水化物と塩分が手軽に補給できる。あとは、おそらく運動生理学的には相当よくないのだろうが、命の水、コーラ。誘惑に勝てず、各エイドでコーラをがぶ飲み。甘いものの誘惑には勝てません。

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振り返ると山というか壁に囲まれた谷がずっと続いていた。

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なんといってもこのあたりが日中走れる景色のハイライト、黙々と歩きながらも写真をパチパチとりながら進む。グランドジョラスは雲がかかっているせいか、おどろおどろしい感じがする。

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最後Arnuvaまでの下り。ここまで結構快調にこれたので、つい調子に乗り、前にいる二人組を抜かしてやろうと横の草むらから追い越しをかけたところで、ぐねって左足首に激痛。内反捻挫。好事魔多し、まだ20kmも走っていないところでやってしまうとは。ここは15年くらい前に、靭帯切ったときと同じところの捻挫。まさかこのタイミングでまたやってしまうとは思わず。やっちまった~、急がば回れ、急いてはことを仕損じる、、などなど、昔の人はよく言ったものだと思っても、覆水盆に帰らず。

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Arnuva (1,769m) 16.8km/93km 14:06

冷や汗をかきながらArnuvaまでとりあえず行き、とりあえずスープを飲みながらやばいかなぁ~と思いながらも、痛くない、痛くない、これは痛くないんだと念じていたら、普通に歩けるようになってきた。なんとも、不思議。補強でキネシオテープをかかとかから足首に張っていたのもよかったのかもしれない。その後下りで左足の踏ん張りが利かなかったり、同じところを捻りそうになってヒヤッとすることが何度もあったが、走ったり登ったりは普通にできた。捻挫をしたらもう終わりと思っていたので、捻挫をしても走ることができるというのは収穫。ただ終わってから靴下を脱ぐと象の足のように腫れ上がっていた。
ここで家族の方の応援にきていた日本人の方に、梅干を頂く。うまい。
ArnuvaからGrand Col Ferretまでは一気の登りで、800mくらい高度を上げる。途中、前回トレッキング時に宿泊したエレナ小屋が左手に見えて、パスタとか肉とか食事うまかったなぁと思い出したが、今手元にあるのはジェルとアミノとべスパだけだった。

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Grand Col Ferret (2,537m) 21.1km/93km 15:46

やはり登りはつらく、結構な数の人に抜かされる。標高もそれなりにあるので、ちょっと気分的にもすぐれない。Grand Col Ferretがイタリアとスイスの国境で、景色はまあまあ良いのだが、天気は曇天で寒いので、最高地点からは早々に下ることにした。ここからPraz-de-fortまでの20km弱で標高1,000m付近まで延々と下ることになり、ここでどれだけ走ることができるかが、制限時間内にゴールできるかどうかの分かれ目だと思っていた。
ただ気分がちょっと悪いので、歩いたり走ったりの繰り返し。やはり標高のせいだと思ったので、高度が下がるまでの我慢だと、言い聞かせて、もくもくと下る。


 

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Le Peuleでスイスの国旗を目にし、ああ、ここはスイスなんだと実感。ここは軽く水だけのエイド。

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標高が下がってくるにつれて、やはり気分が悪いのは直ってきて、走れるようになってきた。やはり上りも下りもストックが重宝される。人によっては下りではあまり使わない人もいるが、僕は全行程フルで利用した。ストックにも色々あり、僕は普段山登りでも使っているLekiのMakaluをもっていったのだが、ヌンチャクのような折りたたみ式のものであったり、もしくはまったく折りたたみ式ではない細めの軽量タイプのものであったり、様々な種類のものがある。中には途中で折れてしまったという人もあり、タイムを狙うランナーでなければ、頑丈さが最重要だと思う。

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このあたり走れるのだが、道が悪いところもあり、捻挫のせいか左足の踏ん張りが若干利かない気もする。何度かコケたりしながら、標高を下げていった。

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La Fouly (1,598m) 31.9km/93km 17:48

La Foulyの手前で雨がサーっと降ってきた。雨具を出している人もいたが、エイドまであと少しなので、そのまま走り、エイドに到着。ここは大き目のエイドで、食べ物、飲み物が潤沢にそろっている。ここで携帯をチェックしたところ、関門のリミットが変わっているらしい。ここは18:45で次のChampexは22:45。ここからChmpexまでは2時間半くらいでみていたので、まだ時間に余裕はありそうだとちょっと安心。 次までに暗くなってしまうだろうと思ったので、ライトを出して、長袖に着替え、ゴアテックスのジャケットも着込んだりして夜に備えた。またまたスープにパンをひたして4切れはパンを食べて、チョコレート、コーラと甘いものも補給して、出発。ここでは20分滞在。

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ちなみに、エイド前にあった下の写真のレストラン、前回トレッキング時は屋外の席でジャガイモとサーモンにチーズをかけて焼いた料理に舌鼓をうった店だった。この日はひっそりしていたが、思わず懐かしくなって一枚パチリ。

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ここからPraz-de-fortまでは村の間を走り、舗装路の部分も結構多い。緩やかな下りで、ここは走らないといけない。雨もやみ、ゴアテックスを着ていると暑いので、面倒なのだか一旦脱ぐことにした。このエリアは、一時期「夢の丸太小屋に住む」という雑誌を愛読したりしていた家マニアの僕にはよだれが出そうな素敵な家々が立ち並んでいるなかを黙々と走っていった。

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途中、私設でウォーターステーションを作って水を配ってくれている人も多数おり、子供が配ってくれたりするととても心が和む。

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いったん下りきると、次のChampex-Lacまではきつめの登り。ずっと下りの足になってしまったので、登りが始まると予想外にきつく感じる。ところどころ、不思議な動物やきのこのオブジェが飾ってある道を黙々と上っていく。 

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Champex-Lac (1,477m) 45.9km/93km 20:34

Champexにはなんとかライトを使わずに到着することができた。ここも大エイドステーション。他にはないパスタの配給もここにはある。長蛇の列ができていたが、並んでパスタといつものスープとパンをもらって、晩御飯に。お決まりのコーラもがぶ飲み。ロンドンから来ていたHさんとOさんにもここで会い、次のTrientの関門は4:45、なんだか楽勝っぽいですねぇ~と話をした。しかし実際はコースが大きく変更になっており、楽勝でもなんでもないのだか、この時点では気づかず。

ここから先は暗闇なので、写真はない。

Champexのエイドを出るとあたりはすっかり真っ暗になっていた。。そして気温もかなり下がっている。手袋と寒さ用の帽子は出していなかったのだが、すぐに装着することにした。Champexの湖の水面も暗闇の中にぼぉーーっと浮かんで見える。前回トレッキング時はここでリキュール掛けのアイスクリームを食べたのだが、、いやはやそんな気は今は起きない。

しばらく車道を歩いた後、トラックへ。森の中で暗闇だがライトを頼りに下っていく。コースは200m毎くらいに蛍光のテープが張ってあるので、ほとんど間違えることはない。ただ暗闇で人もばらけてきているので、慎重に進む。たまに走っている人もいるが、僕は暗闇の雨の中を走る気合は残っておらず、淡々と早足で下っていった。だんだんと雨はひどくなってくる。

下の方にオレンジ色の街の光が見える。夜景がきれいだなぁと思いながら、歩くがこのあたりはコースが変更になっており、Champexで次のポイントまでの高度差等も確認し忘れたので、次にどこに向かっているのか検討もつかなかった。ぬかるんだ道をストックを頼りに、下っていくと高度計がぐんぐん下がり、500m台まで下がり市街地にでた。これはどこまで下がるのだ、これはトレイルランニングの大会ではないのかとおいおい思っていると、標高調整なのかへんな道を登っては降りの繰り返し。むむむ、これは楽しいのか、俺は今楽しいのかと自問自答しながら歩いていると、マスカット畑に出る。マスカットをつまんで食べているフランス人を見て、ちょっと和んだ心を取り戻す。

このあたりは修行を積んでいる気分だった。


Martigny (499m) 59.6km/93km 00:36

そうこうしているうちにMartignyのエイドに到着。走っているときは、そこがMartignyだと知る由もなかったが・・・ここのエイドは、コース変更で急遽こしらえられたのか、テントも小さくランナーが寿司詰めになっており、補給の食料も無し。コーラも切れそうなのでということで5mm分くらいしかもらえず。水も外のフォンテインで汲んでおくれといわれる。ちぇ、コーラもないなんてシケたエイドだぜ!とちょっと荒んだ心が頭をのぞかせる。

ここでスタートから14時間が過ぎていた。2週間前に走ったNorth Downs 50milesは14時間でゴールしたので、ここから先が完全に未知の領域。ちょっと眠気もあるが、気が張っているのかまだ大丈夫。
市街地をアスファルトにマーキングしてある通りに、進んでいくとずんずんあがっていく。つづれ折りの道ではなく、ほぼ直登の上りコース。ううう、これはきつい。トラックに入ると雨に加えて雷も迫力を増しててきた。たまに光ると真っ暗だった道が一瞬かなり先まで見通せてしまうくらい、雷は明るいものだと改めて認識。この天気でコース変更は英断だろう。聞いた話では高山では、雷は横で光るらしい。そのときの恐怖感は半端ではないとのこと。このときの雷雨でBovineの稜線上のエイドステーションはやられてしまい、翌日のUTMBのコースも変更になったと聞いた。光と音の間隔が詰まってきて、ちょっと怖い思いもしたりしながら、雷雨の中を進む。ここから雷雨のなか、標高何mまで登れば着くのかわからない登りが一番辛かった。

今回使用した手袋は「Gore」と書いてあるのだが、ゴアテックスでもなんでもなく、「Gore」という商品名だということがここで判明。ビショ濡れのなか、登るにつれて気温はぐんぐん下がり、息が白いのが自分のライトに照らされて良くわかる。上の方では雨はいつしか、みぞれ交じりになり、Col de la Forclaz 1,527mで寒さはピークに。前回トレッキング時はここでビールとチップスを食べたなと思い出されたが、全くそんな気分にはならず。ガタガタ震えながら、Trientまでは、ここからそう遠くないことはわかっていたので、とりあえず温まりたい一心でエイドを目指して下る。

Trient (1,300m) 67.4km/93km 03:28

Trientのエイドに駆け込み、とりあえず、暖かいスープ、紅茶を飲むも震えは止まらず。ここのエイドは密閉されておらず、かなり寒い。一番の失敗は着替えを一枚しか持っていかなかったこと。もうすでに着替えを使ってしまっており、濡れている今の服から着替えるものがない。さて困った、このまま出発してまた標高高いところで雨が降ってきたら間違いなく動けなくなると考えていると、回りの人でエマージェンシーブランケットを服代わりにしてランニングシャツの下に着こんでいる人がたくさんいたので、真似をすることにした。

しかしあまりにもガタガタ震えていたので、スタッフの人が見かねて救護所はここよりも暖かいからそっちで休んできたらと言ってくれたので救護所のある教会に向かった。確かに暖かい救護所では、リタイヤした人たちが毛布とエマージェンシーブランケット(以下エマ)に包まって多数気持ちよさそうに寝ていた。ここでリタイアしたいのかと聞かれたので、NONO!と答え、エマ服作り作業に入る。半分に折り、頭を出す穴を開けて、脇のしたをテープで固定すれば完了といたってシンプルなのだが、
エイドスタッフによると
 ・エマは服の上から着るよりも地下肌に来たほうが効果が高い。
 ・銀色のエマはオールドタイプで、金色のエアの方が性能が高い。
らしい。ゴワゴワのエマ服を装着し、出発したのは4:25。57分も 滞在してしまった。ここのリミットは4:45分なので大分ぎりぎりになってきた。

Trientを出ると、すっかりランナーはいなくなっていた。しばらく舗装道路を走る。空を見上げると満天の星。きれいな空、これで雨の心配はもうなさそう。エマ服も快適で寒さはあまり感じないので、空を楽しむ余裕がでる。すると急激に眠気を催し、ほんの数秒づつながら歩きながら寝るという人生ではじめての経験をする。ちなみに自分は眠ると右に曲がっていくことが判明。車が来たらあぶない、あぶない。

トラックに入り、緩いのぼりを早歩きで歩く。少しづつ空も白み始める。当初コースではここから2,000mレベルへの登りが2回控えていたのだが、変更後はここからは穏やかなアップダウンがあるのみ。着実に進んでいけばゴールができる気がしてきた。


Vallorcine (1,260m) 77.2km/93km 07:00

途中再び出会ったOさんと一緒に歩き、Vallorcineのエイドステーションへ。すっかりエイドステーションの人もまばらになっており、きっとランナーの最後尾集団にいるであろうことを実感する。もう走るパワーは残っていないので、着実に歩いてゴールを目指すしかない。VallorcineはChamonix Valleyの一番奥なので、ここからはもう上りも無いだろうと希望的観測を胸に進む。

Argentiereを抜け、川沿いを歩き、ドリュも見えてきた。でも少しシャモニから見るのと角度が違うのでもう少しあるのだろう。


Chamonix (1,035m) 93km/93km 11:00

刻々と制限時間の11:20が迫ってくる。9:30くらいにChamonixまであと1時間50分との看板を見つけ、Oさんとこれは、もしややばい??と思ったが、これはハイカー用なので、ここまで80km以上走ってきた自分たちはこれよりは早くつけるはずだと自分に言い聞かせる。しかしChamonixに近づいても、たびたび出現する登りにだんだんと、まだまだある???と不安になってしまう。ようやく大きな下り坂に出て、これは大丈夫だろうと一安心。ここまで着て、タイムアップは絶対嫌だ。街に入るとブラボと声をかけてくれる人多数で、ちょっとしたヒーロー気分で気持ちよい。ゴール手前でパリマラのみんなと妻が出迎えてくれる。やっと旅が終わる、感動というよりは安堵感で自然に笑みがこぼれる。11時丁度にゴール、スタートから24時間38分。制限時間まであと20分ちょっとだった。疲れているなか、出迎えてくれた皆様に感謝。
レース直後は思ったほどの感動はなかったものの、時間がたつにつれ、ジワジワとやってよかったなぁと喜びがこみ上げてきた。

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終わってみれば、これはレースというよりは旅。またレースそのものの時間だけでなく、かなり長い準備期間を経て、旅のスタート、そしてゴールにたどり着いたという充実感があった。走っている人には、それぞれの人の思いがあったことだろう。自然と対峙した自分にとっての24時間40分は、弱い小さい自分を改めて見つめる時間となった。走っているときは楽しいのか楽しくないのか、よくわからない時もあったが、今となってみると、やってよかったなぁ~ということだけははっきりと言える素晴らしい大会だった。     

(おわり) 


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Jetstream777

お疲れ様でした。 素晴らしいコースの連続ですが、いかんせん、距離が長すぎますね。 でも果敢に挑戦されて完走、おめでとうございます。 !(^^)! 素晴らしい思い出になることでしょう。
とりあえず、ななめ読みさせていただきましたが、予期しないことがありますね。 ほんとうに過酷なレース。 (@_@;) 
by Jetstream777 (2011-09-06 21:51) 

hiko

>Jetstream777さま、

ありがとうございます!一晩中25時間近く走ったり歩いたりし続けるのは初めての経験だったので、捻挫や寒さ、雨の夜など辛い時間もありましたが、なかなかグッと来る経験でした(^^″ その分ゴール後の達成感はかなりのものがありました

by hiko (2011-09-12 07:45) 

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